康介は烈しい胸の高鳴りに、息が詰まりそうなほどの緊張感を感じていた。
目の前の椅子からゆっくりと立ち上がった凛子が、彼に淫靡な視線を突き刺したまま、例えようのない仕草で身をくねらせている。
誘惑した凛子自身がひどく欲情しているのは康介の目にも明らかだった。
ほんのりと赤く火照った頬、そこに纏わりつく長い髪を掻き上げながら、彼女は渇いた唇を舌先でねっとりと舐め回した。
そしてその時、張った胸に現れた彼女の勃起した乳首に視線を釘付けにしたまま、康介は彼女が近付いてくるのに合わせてゆっくりと脚を開いていった。
「うふっ・・・康介君たら・・・想像力が豊かなのね・・・
ほら・・・触る前からもうこんなに・・・」
近付いてきた凛子が嬉しさを露にした顔つきで康介の下半身を見下ろす。
そして椅子に座ったまま横へと向きを変え、大きく脚を開いた康介の股間の間に凛子の小さな身体が滑り込んだ。
凛子は時折髪を掻き上げる仕草をしながら細い指先で、彼のジーンズの上をゆっくりとなぞっていく。
「ねぇ・・・?・・・本当に私なんかでいいの?」
そう言って下から覗き込んだ凛子の表情が、康介の目には切なげにも妖しくも映り込んだ。
康介が肩で大きく息を吐き出しながら、眼を見開いて何度も頷く。
目の前に跪いているミニスカート姿の凛子の白く艶かしい太腿が、悩ましく康介の男を刺激して止まない。
そして手を伸ばせば触れ得る位置にある彼女の妖艶な肢体と鼻先を漂う甘い香りが、康介のペニスに脈々と大量の血液を送り込んでいった。
「あはっ・・・お世辞でも嬉しいわ・・・
いっぱい気持ちよくしてあげるからね・・・
ねぇ・・康介君?・・・いつからエッチしてないの?」
「いや・・・そ、その・・・まだ・・なくて・・・一度も・・・」
凛子の言葉に康介は首を横に振りながら、そう答えた。
彼のジーンズを下ろそうとジッパーを摘んでいた細い指先の動きが止まった。
妖しげな雰囲気で康介を刺激し続けていた凛子の顔に、驚嘆の表情が浮かび上がる。
その時、壁際のベッドの上に無造作に置かれていた彼女の携帯電話が鳴り響いた。
身体を起こした凛子がベッドへと駆け寄った。
頭を少し傾げて耳にかかった髪を振り払い、受話器を耳に当てる。
ベッドに両肘をついて康介に背を向けている凛子の生脚が、キッチンからの灯りに照らされて白く輝いた。
「も、もしもし?・・・
あっ・・百合子・・・う、うん・・・いいわよ・・
今、ご飯食べてたところなの・・・
ん?・・・どうしたの?・・・
え?・・・泣いてるの?泣いてちゃ判んないでしょ?・・・」
姉妹の会話は長時間に及んだ。
受話器に向かってしきりに百合子を宥め、彼女の言葉に相槌を打つ凛子から今までの妖艶な表情がだんだんと消えていく。
そして、時折怒ったように声を荒げては妹を諭し、更には優しく嗜める凛子のもう一つの顔に、康介も今までの烈しい興奮から醒めようとしていた。
それから暫くしてようやく電話を切った凛子が康介の方を振り返った。
アルコールも抜け居心地の悪さを感じながらも、康介は帰るタイミングを見失ったまま椅子に腰掛けていた。
「ゴメンね・・・康介君・・・
私ったら・・・康介君が居るのに・・・電話取らなきゃ良かったわね・・・」
「いえ、いいんですよ。僕は・・・
でも百合ちゃん・・・百合ちゃんがどうかしたんです?
聞くつもりはなかったけど・・・泣いてるって・・・」
「ううん・・・何でもないの・・・
はぁ〜・・・
若いからこその悩みだわ〜・・・
でも男の人って・・・色々いるのね〜・・・
康介君みたいな純情な子もいれば・・・拓海君みたいな子も・・・」
突然、凛子の口から発せられた親友の名前に康介はハッとした。
・・・え?・・・拓海が・・・?・・・
・・・あいつが百合子を泣かせたって言うのか?・・・
・・・浮気・・・?・・・まさかな・・・
「百合がね・・・拓海君に・・・彼の部屋で強引に奪われそうになっちゃったんだって・・・」
訳も判らず首を傾げている康介に凛子の声が続く。
「あの子ね・・・純情なのよ・・・
今はまだ誰にも奪われたくないんだって・・・付き合っている拓海君にもね。
康介君とどっか似てるわよね・・・」
康介はこみ上げてくる嬉しさについ顔が綻んだ。
百合子に抱いていた清純なイメージは間違いじゃなかったのだ。
そんな康介を寂しげな表情で見つめていた凛子が再び口を開いた。
「康介君・・・?
百合子・・・本当はあなたの事が好きなんだって・・・」
「え・・・っ・・・?」
目を丸くして康介は凛子を見つめた。
さっき見た妖艶な大人の表情とは打って変わり、彼女の顔にはあどけない少女のような瞳が悲しみに潤んでいるようだった。
「な、なんで・・・僕なんかを・・・」
百合子が俺を好きだって・・・?・・・
それにどうして凛子さんはこんな悲しそうな顔で俺を見つめているのだろう・・・
凛子が大きく溜息をついた。
彼女の艶やかなピンク色の唇が小さく開き、凛子は思い切ったように声を発した。
「はぁ〜・・・
なんだろうね・・・この気持ち・・・
妹に嫉妬するなんて・・・バカよね・・・
あのね・・・康介君・・・
私も・・・あなたの事が・・・
好きになっちゃったのよ・・・
さっきまではあなたをただ誘惑しようと思ってただけなのに・・・
電話で百合子とあなたの事を話してたら・・・
目の前にいるあなたを見ながら百合子と話してたら・・・」
康介は目眩を起こしそうなほどの衝撃を受けた。
頭の中がグルグルと廻りだし、凛子の思いがけない告白に胸が烈しく高鳴っていく。
あぁ・・・なんてことだ・・・
百合子も・・・それに凛子さんも・・・
再び甘い香りが康介の鼻を擽った。
瞳を潤ませた凛子がゆっくりと近付いてきていた。
「私も康介君が好き・・・
康介君は・・・私なんかじゃ・・・イヤ?・・・」
凛子はそう囁きながら康介の耳元に顔を近付けてくる。
彼女の荒く熱い吐息が彼の柔らかな耳に吹きかかる。
愛おしく抱き締めたくなるほどの凛子の仕草だった。
康介は両手で凛子の肩を優しく引き寄せると彼女の目を見つめながら、大きく首を横に振った。
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